「理想の睡眠は8時間」と聞くことがあります。しかし、必要な睡眠時間は全員同じではなく、年齢によっても変わります。特に高齢者では、長く寝床にいればよいとは限りません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、子ども、成人、高齢者で異なる目安を示しています。数字をノルマにするのではなく、朝に休めた感覚があるか、日中に強い眠気がないかと合わせて考えるのがポイントです。
年代別の目安を先に確認する
| 対象 | 睡眠の目安 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1~2歳 | 11~14時間 | 昼寝を含めた1日の合計 |
| 3~5歳 | 10~13時間 | 生活リズムを整える |
| 小学生 | 9~12時間 | 朝の光、朝食、日中の運動も意識 |
| 中学生・高校生 | 8~10時間 | 夜ふかしの習慣化を避ける |
| 成人 | 6時間以上を目安 | 個人差と睡眠休養感を確認 |
| 高齢者 | 床上時間が8時間以上にならないことを目安 | 「睡眠時間」ではなく寝床にいる時間 |
この表は、厚生労働省の睡眠ガイドとGood Sleepガイドをまとめたものです。同ガイドは、健康状態、身体機能、生活環境などによる個人差を踏まえるよう求めています。年齢だけで自分の正解を決める表ではありません。
子どもは成長に合わせて目安が変わる
子どもの必要な睡眠時間は、大人より長めです。厚生労働省のGood Sleepガイドでは、1~2歳が11~14時間、3~5歳が10~13時間、小学生が9~12時間、中学・高校生が8~10時間とされています。
就寝時刻だけを早めようとしても、朝起きる時刻が日によって大きく変わると生活リズムを整えにくくなります。睡眠ガイドは、朝に太陽の光を浴び、朝食を取り、日中に運動し、夜ふかしの習慣化を避けることを勧めています。
まずは、登校時刻から起床時刻を決め、必要な睡眠時間をさかのぼって寝床に入る時刻を考えます。宿題やスマートフォンの時間を削る判断も、就寝直前ではなく夕方までにしておくと実行しやすくなります。
成人は「6時間ぴったり」が目標ではない
成人について、睡眠ガイドは6時間以上を目安として、必要な睡眠時間を確保するよう勧めています。これは全員が6時間で十分という意味ではありません。
ガイドが紹介する研究上の平均では、夜間に実際に眠れる時間は15歳前後で約8時間、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、加齢に伴って短くなる傾向があります。ただし、これは集団の平均であり、一人ひとりの目標時間を直接決める数字ではありません。
自分に足りているかは、次の状態と合わせて見ます。
- 朝、眠ったことで休めた感覚があるか
- 日中に仕事や勉強を妨げる強い眠気がないか
- 休日だけ極端に長く眠っていないか
- 起床時刻が日によって大きくずれていないか
睡眠時間を確保しても休養感が低い場合は、時間だけを延ばすのではなく、運動、食事、嗜好品、寝室環境なども見直します。
高齢者の「8時間」は睡眠時間ではない
最も誤解しやすいのが高齢者の目安です。睡眠ガイドが示しているのは、「8時間眠る」ことではありません。寝床で過ごす時間(床上時間)が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保するという考え方です。
年齢とともに実際に眠れる時間が短くなる一方、寝床で過ごす時間は長くなる傾向があります。眠れないのに早く床へ入り、朝も長く横になっていると、寝床の中で目覚めている時間が増えやすくなります。
「8時間寝なければ」と無理に長く横になるのではなく、眠気が来てから床に入り、朝は決めた時刻に起きるなど、必要以上に床上時間を延ばさないことが大切です。長い昼寝は夜の眠りを妨げるため、ガイドは日中に長時間の昼寝を避け、活動的に過ごすよう勧めています。
睡眠時間と床上時間を分けて記録する
自分の状態を確認するときは、1週間ほど次の4項目をメモします。
- 寝床に入った時刻
- おおよそ眠りについた時刻
- 目覚めた時刻と寝床を出た時刻
- 朝の休養感と日中の眠気
たとえば23時に床へ入り、0時に眠り、7時に起きて7時30分に床を出た場合、床上時間は8時間30分でも、単純に数えた睡眠時間は約7時間です。途中で目覚めていた時間があれば、実際の睡眠はさらに短くなります。
正確な分単位にこだわるより、「寝床には長くいるのに眠れていない」「平日だけ短い」「朝の休養感が低い」といった傾向を見つけるために使います。
数字以外に見たい「睡眠休養感」
睡眠ガイドは、睡眠の量とともに、朝起きたときに休まったと感じる「睡眠休養感」を重視しています。目安の時間を満たしていても、毎朝疲れが残るなら、十分な睡眠が取れているとは言い切れません。
次のような状態が続く場合は、生活習慣だけの問題と決めつけず、医療機関への相談を検討します。
- 十分な時間を確保しても強い眠気や疲労感が続く
- 大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される
- 寝つけない、何度も目覚める状態が長く続く
- 眠気で運転や仕事に支障が出る
眠気がある状態では運転を避け、安全を優先してください。子どもの睡眠習慣を整えても問題が続く場合、厚生労働省のGood Sleepガイドは医療機関、保健所、療育センターへの相談を案内しています。
今日から見直す順番
最初から理想の時間に合わせようとせず、次の順番で確認します。
- 1週間、就床・入眠・起床・離床の時刻を記録する
- 朝の休養感と日中の眠気を一緒に記録する
- 年代別の目安と比べ、大きな不足や長すぎる床上時間を探す
- 起床時刻、朝の光、日中の活動、夜の過ごし方を一つずつ整える
- 不調が続く場合は専門家へ相談する
必要な睡眠は、年齢だけでなく、その日の活動、体調、生活環境でも変わります。「全員8時間」という一つの数字に合わせるより、年代別の目安を出発点に、睡眠時間、床上時間、朝の休養感、日中の眠気をセットで見直しましょう。