海の上で暮らす船の乗組員は、お風呂や掃除にどんな水を使っているのでしょうか。海水が身近にあっても、用途によって使われる水は異なります。

海上自衛隊の艦内生活の紹介と、造水装置の公式資料を調べると、海水を使う場面と、海水から真水を造る工夫が見えてきました。ここでは、資料に書かれた事例を分けて紹介します。

海水を使う湯船と、真水で洗う甲板の例

海上自衛隊の「Air Traffic Control」第4弾は、航空管制官の艦艇勤務を紹介する資料です。2ページ目の艦内生活の紹介には、湯船に海水を使う例が載っています。

同じページには、艦内で海水から造った真水を使い、飛行甲板に付いた潮を洗い流す作業も紹介されています。資料では、この真水を貴重なものとして説明しています。

お風呂の水と甲板を洗う水は、それぞれの用途で紹介されています。この資料だけで、すべての艦艇のお風呂や水の配管が同じだとは判断できません。海水を湯船に使う理由や詳しい設備も、ここでは断定しません。

蒸気を冷やして真水にする「造淡装置」

海水から真水を造る装置は、どんな仕組みなのでしょうか。

防衛省の「分野別防衛産業の現状」の艦船分野には、造淡装置の説明があります。印刷11頁では、艦内の蒸気を使って海水を沸騰させ、そこで発生した蒸気を凝縮して真水にする方法を紹介しています。

流れを整理すると、海水を加熱する → 蒸気を取り出す → 蒸気を冷やして水に戻す、という仕組みです。これが、資料にある船上の造水方法の一例です。

なお、この装置の説明と、先ほどの海自の艦内生活の紹介は別の資料です。海自の紹介に登場する艦艇が、この方式を使っていると特定できる情報ではありません。

RO膜を使う舶用製品もある

メーカーの製品情報を見ると、膜を利用する造水装置もあります。

三浦工業の舶用膜式造水装置WM-Rは、RO膜を採用した製品として紹介されています。メーカーは、熱源を必要とせず造水できることを特長に挙げています。

さらに、RO膜に2段階で通水することで、用途に合わせた純度の異なる2種類の清水を造ると説明しています。水を造る方法だけでなく、造った水をどの用途に合わせるかという工夫も見えてきます。

これは、メーカーが公開している舶用製品の例です。海自の資料に登場する艦艇への搭載や、その艦艇の造水能力を示すものではありません。

船の水は「使う場所」と「造る方法」を分けて見る

今回確認できた情報を整理すると、次のようになります。

見るポイント 資料で確認できた例
水を使う場所 海自の艦内生活の紹介には、海水の湯船と、真水での甲板清掃がある
水を造る方法 防衛省の造淡装置の説明では、海水から発生した蒸気を凝縮する
用途に合わせる工夫 三浦工業のWM-Rには、RO膜を使い、純度の異なる清水を造る説明がある

この表は、別々の資料・製品の例を整理したものです。一隻の船の設備をまとめた図ではありません。

船の生活について調べるときは、何に使う水なのか、どの装置の説明なのか、どの船の事例なのかを一緒に確認すると理解しやすくなります。海に囲まれた船にも、水を造り、用途に合わせて使う仕組みがあることが分かります。